「グランド・ブダペスト・ホテル」まさにパーフェクト!(前ブログより)

前ブログの映画レビューをこちらに移管しようかそのままにしようか迷っております。

移管するといっても、データの互換性がなさそうなので、手作業になりそうな予感がするのですが…。面倒だからやっぱり放置かなあ。いやでも、映画の鑑賞記録は私の中で結構大事だし。悩みどころであります。

さて、先日はアカデミー賞でしたね。
今年は珍しくノミネート作品をちょこちょこ観ていたので、とても楽しめました。作品賞と監督賞は分かれると思ったんですが…。「バードマン」は未見なのでなんとも言えないものの、私は「6才のボクが大人になるまで」を推していたので、ちょっと残念だったな。パトリシア・アークエットが助演女優賞は納得の結果だったけども!!

そしてもうひとつ、上映直後からこれはアカデミー賞に絡んでくるな…と思っていたのが「グランド・ブダペスト・ホテル」。最終的にノミネート作品を見たら、作品賞は難しいだろうなーと思ったし、実際とれなかったのだけど、映画としての完成度は本当に素晴らしい作品だと思います。
で、その感動を鑑賞後の私が熱く熱く語っているのを、前ブログから引っ張ってきますね。

☆☆☆☆☆

ああもう、この素晴らしさをなんと表現したら!

土曜日、大雨の中「グランド・ブダペスト・ホテル」を観てきました。
ウェス・アンダーソン作品なので、絶対絶対映画館で観ておきたかった。最近はリバイバル上映ばっかりで新作に飢えていたし。

あらかじめ言っておけば、ウェス・アンダーソンが苦手な人は、別になんてことないただのお洒落ぶってる映画だと思います。実際、Yahoo!映画なんかでレビューを読むと★ひとつの人が少なからずいる。なので、いつものとおり、このレビューも主観なんだけども。
この作品は、パーフェクト。
間違いなく10年に1度現れるかどうかの傑作。まさかこんなにいい映画に出会えるとは。これから観る人の期待値を上げるのはちょっと…と思いつつも絶賛せざるを得ない。腰抜かしちゃうレベル。

舞台はヨーロッパの架空の国にあるグランド・ブダペスト・ホテル。時は1932年。超名門と謳われたこのホテルには世界中からお金持ちが宿泊しにやってくる。お目当ては凄腕コンシェルジュのグスタヴ・H。ある日長年のお得意様であるマダムDが自宅で謎の死を遂げ、グスタヴがその容疑者に。彼とベルボーイのゼロの逃亡劇が始まる…

という話。

ストーリーとしては、ミステリー?はたまたサスペンスか。いやいやこれは、グスタヴとゼロの数奇な逃避行を描く冒険譚です。謎解きあり、アドベンチャーあり、ブラックユーモアあり。それにお得意の映像美が加わって、ファンタジーの雰囲気も。
さらに、これもいつものことながらそうそうたる出演者!ゴージャスな群像劇とも言えるな。

とにかくありとあらゆる要素を盛りに盛った作品なんだけど、一瞬たりともブレることがない。
ストーリー、出演者、映像美、音楽、間合い、何もかもがキッチリと調和して(キッチリと調和って変な表現だけど、この監督の場合しっくりくると思う)作品を作り上げています。ほんと完璧。パーフェクト。それ以外の言葉が見つからない。

ただ観てるだけでも本当に楽しい作品なのだけど、垣間見える反戦メッセージ、ファシズムに対する批判も見逃せない点です。

この監督の作品って、ひねくれてて、シャイで、自分の好きなスタイルで武装してるけど、いつもどこかにそこはかとない孤独感が漂っていて、内面に温かく優しい人間性を秘めているのが魅力だと思うんだけど、今回もしかり。
ただ、今回のメッセージはいつもより声高にハッキリと打ち出されていたように感じられます。どう受け取るかは人それぞれだけど、ウェス・アンダーソン流の反戦映画と考えてもいいんじゃないかな。

そうそう、出演陣がとにかく豪華な作品なので、それについても言わなくちゃね。
主演のレイフ・ファインズ、私の中ではカメレオン俳優として名高いのだけど、今回も素晴らしい。でも負けずにゼロ役のF・マーレイ・エイブラハムも良い。絶妙なコンビです。
ティルダ・スウィントン、身体張ってるなーと驚き。彼女も変幻自在だよね。エドワード・ノートンはいつものとおり。でも彼も画面で映えますね。レア・セドゥは超ちょい役だけどキラッと光る存在感。シアーシャ・ローナンの透明感も素敵。いま注目の女優さんとのこと。ウェス・アンダーソン作品ではおなじみのビル・マーレイもサラリと登場してます。そして私の中で驚きだったのが、腹黒息子を演じているエイドリアン・ブロディ。味がある系で演技派だけど決してビジュアルは好みじゃないはずなんだけど…、この作品に関してはすごーーーーくセクシーではないですか!!!かっこいい。かっこいいよーーー。びっくり!(ダリみたいだけどさ)好みのビジュアルといえばジュード・ロウも出てるんですが、この映画に関してはブロディのカッコよさにはかないません。うっとり〜

ざざっと改行なしで書きましたが、ざざっと注目株や大物を並べるだけでもこんな感じ。豪華!でも、それぞれが主張しまくってるのに絶妙な塩梅でまとまってるのです。ほんとスゴイ作品。その意味でも傑作です。

映像美を絶賛するのは、この監督については当たり前なのだよね。ビジュアル的に完璧なのはいつものことです。出演者が豪華で素晴らしいのもしかり。
この監督の凄いところは、胸焼けしそうなてんこ盛り状態なのに、いつだってそぎ落とされたシンプルな印象を与えるところです。
今回は、それがもう最高点まで達した感じ。
こんなにゴテゴテなのに、余分なものはひとつもない。こんなに盛りだくさんなのに、どこか寂しいような何とも言えない余韻を残す。

余談ですが、この映画って何かに似てるなーと思ったら、江戸川乱歩の「押絵と旅する男」と似てるんだわ。
あの不思議な感じ、余韻、切なさ。
ウェス・アンダーソン江戸川乱歩って全然違うのにね!

いくら語っても語りきれないし、その素晴らしさを私の言葉じゃ表現しきれないのがもどかしい。
とにかく傑作。パーフェクト。
いい映画ってたくさんあるけど、パーフェクトと言える映画って本当に本当に少ない。
極上の作品です。

☆☆☆☆☆

ウェス・アンダーソン作品はどれも良いんだけど、個人的に超オススメはやはり「ザ・ロイヤルテネンバウムス」でしょうか。恵比寿ガーデンシネマに行ったあの日をよく覚えています。
おそらくそれよりも「グランド・ブタペスト・ホテル」の方が完成度が高いと思います。でもきっとこれからもウェスアンダーソンは良い映画を撮り続けると思うんだよね。それがとても楽しみです。

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